留学で学んだこと

いきなりですが今回のまとめです

  1. 知っていることは財産である・財産の共有、分配、その他
  2. フランスじゃなくてもいい
  3. フランスじゃないとだめだった


1.知っていることは財産である・財産の共有、分配、その他
いきなり偉そうです。
僕が日本にいるころは学生と言うこともあり、僕より大人の人に会ったら何か教えてもらうつもりで話を聞いていました。
何も知らない学生なのでその姿勢自体は間違っていなかったと思います。
しかしそんな僕に大きなインパクトを与えた出来事が3つありました。


 1つ目は、(僕はこの表現を褒め言葉として使いますが)大人げのない大人に「君はおもしろくない」と言われたことです。
話の内容はフランスはどうだとかいう割とあたりさわりのない話ですが、僕が完全に聞き手にまわっていました。
その話の最中にいきなり言われました。僕は雷に打たれたように固まってしまいました。
「確かに話はうまくないけどおもしろくないと言わなくてもいいじゃないか」と憤慨しました。
しかし厳密に会話をしていたか、と考えると僕たちは会話をしていませんでした。
その人からするとときどき相槌を打つ壁に向かって話しているのと同じように感じられたのでしょう。
その時から会話、ということについて疑問に思うようになりました。
おそらく彼は彼が知っていることを彼の財産だと思っていたんだろうと思います。
そして僕はそれをなんのお返しを与えるそぶりもなく盗ろうとした泥棒、というのがしっくりきます。
この考えは間違っているとは思いません。
今までの大人はやさしく「投資してやるか」という気持ちで色々話を聞かせてくれていたんだと思います。
「他人には教えたくないとっておきのお店」という表現がありますが、情報を財産ととらえている端的な表現ではないでしょうか。
財産を守ろうとしている人に対して会話をするときには、全くどうでもいい話をする(価値が0に近いものを交換しつづける)、
または自分の財産の自慢をする(相手が自慢し返したときに大きな価値のものを交換しあうことになる)という2つの方法がいい気がしました。
そしてそこまで繋がってきたとき、僕はあまり持っていない情報を出し続けた方がいい気がしました。
おそらくえらい人は僕より価値のある情報をたくさん持っているでしょう。
財産を持っていない僕は情報を出し続ければその人が僕の財産とその人の性格に応じたものをくれます。
会話がなんなのか、今でもよく分かりませんが情報交換ととらえてはいけない気がします。
怖くなって何も出せなくなってしまう。



 2つ目は、フランス人との会話で意見を頻繁に求められることです。
例えば、「ワインっておいしいよね」という話題があったとします。
日本人が相手なら「ワインっておいしくない!?」という同意を求める会話が割と当たり前だと思います。
しかしフランス人だと「ワインっておいしい。君はどう思う?」という会話になることが多いように思います。
僕は白ワインより赤ワインの方が好きなので「ワインおいしい。特に赤ワインがすきー」と答えます。
これは日本人相手でもフランス人相手でも成り立ちます。
しかし、会話の下手な僕だと日本人との会話の際に「うん、おいしいよね」という相槌だけで終わってしまいがちになります。
そこで「赤ワインの方が好き」と言えば「なんで!?」「味の違いがわかりやすいからワインを知らない僕でも楽しめる」となります。
この「赤ワインの方が好き」、というおまけをつけるかつけないかだけでその後に
フランス人「知ってるか、ワインを味わうときはワインを口に含んだまま空気を吸ってブレンドして風味を味わうんだ」
僕「なんかソバみたいだね」
フランス人「ソバ?」
僕「日本人は麺を今みたいにすすって食べるんだ」
フランス人「それはうまいのか?」
僕「うまいよ!『ソバ』っていうのの他にも『うどん』とか『ラーメン』ってのがあるんだよ」
フランス人「うどん知ってる!」
と僕にしてはスムーズな会話になります。
赤ワインが好きっていうおまけは恐れない方がいい。例えばワインが嫌いって思っていたら口に出せばいい。
相手はなんでか聞いてくれるし言わないよりは自分が伝えられる気がします。


 3つ目は、パーティについてです。
さすがヨーロッパ(?)というべきか、日本では考えられない頻度でパーティがあります。
当然そのパーティでは知らない人と知り合ったりします。
人を知った分財産が増えるわけです。コネは財産という話をよく聞いていましたがとてもよく納得できました。
パーティを催す人は、友人の友人と知り合うことで報酬を受け取ります。
(もちろんおいしいお酒や食べ物もギブアンドテイク)
このパーティに呼ばれた僕は、知っているものと言う財産をあまり持っていないので知っている人を連れていく、という感じです。
よくできていますね。
フランスに来てすぐの僕は、まずは知り合いに財産と言う形でパーティに参加させてもらいます。
そこでの会話で僕の持ちうる財産を放出して、相手の財産をもらったりします。
次に僕は別のパーティに知り合いを財産として持っていって参加させてもらいます。
その知り合いを紹介したりまた知らない人に会ったりして財産を貯め、共有します。
ここで「ソーシャルネットワーク」というものの意味についてやっと分かった気がします。


2.フランスじゃなくてもいい
ソーシャルネットワーク、と言いましたがそのまんまです。
日本でも同じようなことができるのは簡単に想像できます。
ネット上でも得られます。
知り合いがいて、その知り合いを知らない別の知り合いがいたら話してみる。
パーティという場じゃなくても一緒に遊ぶだけでもいい。
小さい頃やっていたことがなんで大きくなったらできなくなるんでしょうね。
でも僕は小さいころも「初めての友達と遊ぶ」ことが苦手だった気がします。
そんな人にとってはちょっと大変かもしれませんが、知り合いを別の知り合いに
「面白い人だね」と評価してもらえるのはうれしく、少しだけ誇らしくもあります。


3.フランスじゃないとだめだった

僕の場合にはこの当たり前にも思えることに気付くのにフランスにまで行かないといけませんでした。
頭が凝り固まっていました。
生活リズム、言語、食べ物、とっかえて見るのもいいかもしれませんよ、と無責任に留学万歳するつもりはありませんが
今まで気付けなかったことに気づけたので無駄だとは言いません。
僕が留学する前はフランス語なんて全くしゃべれない、英語も怖い、治安悪いんでしょ、などなど
たくさん不安がありましたが臆病になる価値もない人間なんだと無駄に開き直ったおかげでこんなことになりました。



おわりに
郷に入りては郷に従え、ということわざがあるように日本ではこの方法は通用しないかもしれません。
でも2.で書いたように日本でも別の方法で財産を増やし、共有する方法があると思います。
そんなことを思いながらフランス生活の終わりを前に、センチメンタルになったりしていますよ。